大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和54年(ラ)1367号 決定

抗告人 富岳興業株式会社

右代表者代表取締役 宋裁容

右代理人弁護士 齋藤栄一

主文

本件抗告を却下する。

理由

抗告申立の趣旨は、「原決定を取り消し、更に相当の裁判を求める。」というのであり、その理由は、別紙抗告理由書記載のとおりである。

一件記録によれば、本件競売事件は、債権者株式会社第四銀行の昭和五三年九月二九日付申立に基づいて同年一〇月三日開始決定がなされ、同月五日任意競売申立の登記が経由されたこと、本件競売不動産である原決定添付目録(一)記載の土地及び同(二)記載の建物につき、いずれも本件競売申立登記後の昭和五四年三月三一日付で抗告人名義に同月三〇日売買を原因とする所有権移転仮登記が経由されていることが、認められる。

ところで、抗告人は、自己が本件競売不動産の買受人であり本件競売手続における利害関係人に当たるとして、本件競落許可決定に対し即時抗告の申立をしたものと解せられるから、検討する。不動産競売における利害関係人の範囲を定めた競売法二七条四項二号にいう所有者とは、競売申立登記当時の登記簿上の所有者を、また、同項三号にいう権利者とは、競売申立登記当時の登記簿に登記された不動産上の権利者をそれぞれ指すものと解するのが相当であるところ、前記認定した事実によれば、抗告人は、本件競売申立登記当時、登記簿上の所有名義人又は権利者でないことが明らかであるから、右の所有者又は権利者に当たらないというべきである。更に、抗告人は、同項四号にいう不動産上の権利者としてその権利を証明した者に当たるともいえない。なぜならば、本件競落許可決定前に、抗告人が競売裁判所に対し、その権利を証明したと認めるに足りる証拠がないからである。その他に、抗告人が同条四項にいう利害関係人に当たると認めるに足りる証拠はない。

そうすると、本件抗告の申立は、抗告権を有しない者が提起した不適法なものであるから、これを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 杉山克彦 判事 倉田卓次 井田友吉)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例